ご相談のきっかけ
一般社団法人を運営されているN様から、「現在の法人を、税法上の非営利型一般社団法人として取り扱われるよう見直したい」というご相談をいただきました。
N様の法人は、設立当初、理事1名のシンプルな体制で設立され、税法上はいわゆる「普通法人」として運営されていました。
その後、法人の活動を続けていく中で、今後の法人運営や税務上の取扱いについて税理士に相談したところ、非営利型法人の要件を満たす形へ法人の体制を見直すことを検討されるようになりました。
そこで問題となったのが、現在の定款や役員構成、法人運営の状況が、非営利型法人として取り扱われるための要件を満たしているかという点でした。
特にN様の法人は理事が1名のみであったため、非営利型法人に求められる役員構成の要件を満たすためには、理事体制そのものを見直す必要がありました。
「新しく法人を作り直す必要があるのか」「定款をどのように変更すればよいのか」「理事は何名必要なのか」。
こうした点を整理するため、既存の一般社団法人を活用しながら、非営利型法人の要件に適合する体制へ見直したいということで、ご相談いただきました。
状況の整理(タイムライン)
まず、現在の定款、登記事項証明書、法人の役員構成、実際の法人運営の状況などを確認しました。
一般社団法人には、法人税法上、すべての所得が課税対象となる普通法人として取り扱われるものと、一定の要件を満たすことで「非営利型法人」として取り扱われるものがあります。
今回N様が希望されていたのは、このうち「非営利性が徹底された法人」の要件を満たす形に法人の体制を整えることでした。
ここで重要なのは、「非営利型法人」という法人類型へ法務局で変更登記を行うわけではないという点です。
非営利型法人に該当するかどうかは、法人税法上の要件を満たしているかによって判断されます。そのため、単に名称を変更したり、特定の登記を行ったりすれば非営利型になるものではありません。
今回、まず現在の定款を確認したところ、非営利性が徹底された法人の要件となる「剰余金の分配を行わないこと」や「解散した場合の残余財産の帰属先」に関する規定について、見直しが必要な状態でした。
さらに、大きなポイントとなったのが理事の人数です。
N様の法人は、設立以来、理事1名で運営されていました。
非営利型法人の要件の一つとして、各理事について、その理事本人や配偶者、一定の親族その他特殊な関係にある理事の合計数が、理事総数の3分の1以下であることが求められます。
理事が1名の場合、その理事本人だけで理事総数の100%を占めるため、この要件を満たすことができません。
そこで、非営利型法人の要件を満たす体制を整えるためには、特殊な関係のない理事を追加し、少なくとも理事3名の体制とすることが必要でした。
また、定款や役員構成だけではなく、特定の個人や団体に特別の利益を与えていないことなど、実際の法人運営についても確認が必要となります。
そのため、N様のケースでは、定款・役員構成・法人運営の3つの面から法人全体を見直していくことになりました。
対応方法
まず、現在の法人の状態と、非営利型法人として取り扱われるための要件を一つずつ照らし合わせました。
非営利型法人への該当性は、定款変更や役員変更といった一つの手続きだけで決まるものではありません。
定款の内容、役員構成、特別の利益の供与の有無、実際の法人運営などを含め、法人税法上の各要件をすべて満たしている必要があります。
そこで、まず定款について、
・剰余金の分配を行わないこと
・法人が解散した場合の残余財産の帰属先
・その他、非営利型法人として必要となる規定
を確認し、必要な内容へ見直しました。
定款変更については、社員総会の決議が必要となるため、定款変更案を作成するとともに、社員総会議事録などの必要書類も整備しました。
次に、理事1名だった役員体制を見直しました。
非営利型法人の要件を満たすためには、各理事とその親族等の理事数が理事総数の3分の1以下である必要があります。
そこで、N様と相談しながら、法人の活動に実際に関わる方の中から、既存の理事と特殊な関係のない方を新たな理事候補として検討しました。
その結果、理事を2名追加し、従来の理事1名から理事3名の体制へ変更しました。
これに伴い、社員総会で新たな理事の選任を行い、理事追加の登記について対応しました。
ただし、理事を3名に増やせば、それだけで当然に非営利型法人として取り扱われるわけではありません。
3名の理事の関係性が要件を満たしていることはもちろん、特定の理事、社員その他の関係者に特別の利益を与えていないことなど、実際の法人運営についても継続して要件を満たす必要があります。
そのため、N様には、今回の定款・役員構成の見直し後も、法人運営が非営利型法人の要件から外れることがないよう注意が必要であることをご説明しました。
また、非営利型法人への該当性は税務上の判断となるため、税理士とも連携して確認を進めました。
司法書士が定款変更、役員選任、変更登記などの法人法務を担当し、税理士が法人税法上の要件や税務上の取扱いを確認することで、それぞれの専門分野を分担しながら体制を整えていきました。
結果
社員総会で必要な定款変更を行うとともに、新たに理事2名を選任し、従来の理事1名体制から理事3名体制へ変更しました。
併せて、新たな理事の就任について変更登記を行いました。
これにより、定款や役員構成について、非営利型一般社団法人の要件に適合するための体制を整えることができました。
また、実際の法人運営についても、特別の利益の供与を行わないことなど、今後継続して注意すべきポイントを整理しました。
税務上、非営利型法人に該当するかどうかについては、定款や登記だけで決まるものではなく、実際の法人運営を含め、法人税法上の要件をすべて満たしていることが必要です。
そのため、税務面については税理士にも確認いただきながら対応を進めました。
今回のポイントは、「普通法人から非営利型法人へ変更する」という独立した登記手続きが存在するわけではないことです。
N様の場合は、理事1名という設立時のシンプルな体制から、定款の内容と役員構成を見直し、既存の法人をそのまま活用しながら非営利型法人の要件に適合する体制を整えました。
担当者からのひとこと
一般社団法人は、設立時には理事1名のシンプルな体制でスタートすることもできます。
一方で、その後、税法上の非営利型法人としての運営を検討する場合には、設立時のままの体制では要件を満たせないことがあります。
今回も、理事が1名であったことから、非営利型法人の役員構成に関する要件を満たすため、理事を追加して3名体制へ見直す必要がありました。
ただし、理事を3名にすれば自動的に非営利型法人になるわけではありません。
定款の内容、理事同士の関係性、特別の利益の供与の有無など、法人税法上の各要件をすべて満たし、その状態を継続することが必要です。
当事務所では、一般社団法人の定款変更や役員変更登記だけでなく、必要に応じて税理士などの専門家とも連携しながら、法人の目的に合った体制づくりをサポートしています。
現在普通法人として運営している一般社団法人について、非営利型法人の要件に適合するよう見直しをご検討されている場合も、まずは現在の定款や役員構成を確認するところからお気軽にご相談ください。
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