ご相談のきっかけ
M社様は、地方都市を拠点として、複数の事業領域を展開し、複数のグループ会社を傘下に有する企業グループです。
事業拡大の一環としてM&Aにより新たな会社をグループに迎え入れたことから、買収後のグループ会社について、親会社のガバナンス方針に沿った組織体制へ移行する必要がありました。
買収対象会社は、もともと別の企業グループの傘下で運営されていたため、M&A後に新たなグループ会社として運営していくことを前提に、既存の定款や機関設計が現在のガバナンス方針に適合しているかを改めて確認する必要がありました。
そこで、
「親会社から役員を派遣し、経営管理体制を強化したい」
「取締役会・監査役を設置して、グループ会社としてのガバナンス体制を整えたい」
「今後のグループ経営のため、古い定款規定をまとめて整理したい」
とのご相談をいただきました。
状況の整理
今回のポイントは、単に親会社から役員を派遣して役員変更登記を行うだけではなく、M&A後の会社を今後どのようなガバナンス体制で運営していくのかを踏まえ、会社の機関設計と定款全体を一体として見直すことでした。
まず、従来の経営体制から、複数の取締役による意思決定・監督を行う体制へ移行するため、取締役会を設置。併せて、業務執行を監査する機関として監査役を設置し、親会社から役員を派遣することで、グループとして経営状況を把握・監督できる体制を整えることとなりました。
さらに既存の定款を確認したところ、今回の機関設計変更と併せて、今後の会社運営を考えるうえで整理しておいた方がよい規定が複数存在しました。
そこで、今回のM&A後のガバナンス整備を契機として、定款全体を確認し、必要な規定をまとめて変更する方針としました。
対応方法
当事務所では、買収後のグループ会社について、親会社が予定しているガバナンス体制を確認したうえで、必要となる会社法上の手続・定款変更・登記事項を整理しました。
まず、買収対象会社の経営管理体制を強化するため、取締役会設置会社へ移行するとともに、監査役を設置しました。また、親会社から取締役等を派遣することで、買収後も親会社側がグループ会社の重要な経営判断に関与し、経営状況を継続的に把握できる体制を構築しました。M&Aでは、株式を取得して子会社化すること自体がゴールではありません。買収後にどのような意思決定体制・監督体制を構築するのかを検討し、必要に応じて会社の機関設計や役員構成を見直すことが重要となります。
今回の手続では、機関設計の変更だけでなく、既存の定款についても全体的な確認を行いました。今回は、個別の登記事項だけを変更するのではなく、M&Aを契機として定款そのものを棚卸しし、現在のガバナンス体制に合わせて整備することを重視しました。
親会社からグループ会社へ役員を派遣することとなったため、役員が負う会社法上の責任についても定款規定を確認しました。そこで、会社法第426条に基づく取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定を新たに設けるとともに、会社法第427条に基づく非業務執行取締役等との責任限定契約に関する規定についても整備しました。グループガバナンスを強化する一方で、会社法上認められる範囲で役員の責任に関する制度を整備しておくことも、役員派遣を円滑に行ううえで重要となります。
今回の手続では、多数の定款変更・登記事項が同時に発生しました。複数の変更を個別に進めるのではなく、相互の整合性を確認しながら一つのプロジェクトとして進行することで、手続漏れや定款と登記の不一致が生じないよう対応しました。
結果
取締役会・監査役の設置、親会社からの役員派遣を実施し、M&Aで取得した会社について、グループ会社として必要となるガバナンス体制を整えることができました。併せて、株券発行、株式譲渡制限、役員の責任免除・責任限定に関する規定など、定款規定についても一括して見直しました。
単にM&Aによる株主変更を行うだけでなく、買収後の会社をグループの一員として継続的に管理・運営できる会社法上の基盤を整備することができた事例となりました。
代表司法書士からのひとこと
M&Aでは、株式譲渡契約を締結し、株式の取得が完了すれば手続がすべて終わるわけではありません。
買収後には、
「誰を取締役として派遣するのか」
「取締役会や監査役を設置するのか」
「重要事項をどの機関で決定するのか」
「既存の定款をそのまま利用して問題がないか」
など、PMI(買収後の統合)の観点から会社法上の体制を整備することが重要です。
特に、長期間にわたりオーナー企業として運営されてきた会社を買収した場合には、現在の会社運営には必要性の乏しい定款規定や、買収後の機関設計と整合しない規定が残っていることもあります。
そのため、M&Aを実行する際には、株式取得そのものだけでなく、買収後の会社をどのようなガバナンス体制で運営するのかまで見据えて、定款・登記を確認しておくことが重要です。
福岡アルブル司法書士事務所では、M&Aに伴う株式譲渡・役員変更手続きにとどまらず、取締役会・監査役の設置、定款の全面的な見直し、株式譲渡制限、株券発行規定、役員の責任に関する規定など、買収後の会社法務・ガバナンス整備についても一貫してサポートしています。
「M&Aで取得した会社の定款を見直したい」
「買収後、親会社から役員を派遣するため会社の機関設計を変更したい」
といった場合には、お気軽にご相談ください。
※当サイトに掲載している事例には、福岡アルブル司法書士事務所で取り扱った案件のほか、代表司法書士がこれまでの司法書士業務において実際に担当・関与した案件を含みます。守秘義務及びプライバシー保護の観点から、案件を特定できないよう、会社名・金額・時期その他の事情を一部変更・一般化して掲載しています。